IT業者から見積もりが届いた。金額は100万円と書いてある。
高いのか、安いのか。
パソコンなら、店を見れば相場が分かります。ところが仕組みの導入やネットワークの工事は、同じ内容の見積もりが他所に存在しません。 比べる相手がいないのです。
最初にやることは、金額を見ないことです
つい、いちばん下の合計を見てしまいます。
そこから始めないでください。 金額だけを見ても、妥当かどうかは絶対に分かりません。
最初に確かめるのは、これだけです。
この金額で、何をしてくれるのか。
次にやることは、項目に分けることです
見積もりを、こう分けて考えてください。
| 何の費用か | 中身 |
|---|---|
| 製品そのもの | 使う権利、機器の代金 |
| 最初の設定 | 使い始められる状態にする |
| データを移す | いま使っているものから移す |
| 現地での作業 | 実際に来てもらう作業 |
| 使い方の説明 | 社員への説明 |
| 入れたあとの対応 | 困ったときに聞ける窓口 |
「システム導入 100万円」ではなく、「何にいくらかかっているか」で見ます。
分けてみると、「製品は30万円で、残り70万円は作業の費用だった」ということが見えてきます。それが高いかどうかは別として、何にお金を払うのかが分かります。
「一式」と書かれていたら、聞いてください
見積書に、こう書かれていることがあります。
システム導入 一式 ◯◯万円
それ自体が悪いわけではありません。 書き方の習慣です。
ただ、一度だけ聞いてみる価値があります。
「この一式には、何が含まれていますか」
特に確かめたいのは、次が含まれているのか、別料金なのかです。
- いまのデータを移す作業
- 現地に来てもらう作業
- 社員への説明
- 追加の設定
- 入れたあとの対応
ここを先に聞いておくと、「聞いていた話と違う」が減ります。 あとから出てくる追加費用の多くは、ここです。
最初の金額だけで比べないでください
2社から見積もりが来たとします。
- A社:最初に50万円、月々5万円
- B社:最初に100万円、月々2万円
最初の金額だけなら、A社が安く見えます。
ところが3年使うと、こうなります。
- A社:50万 + 5万×36か月 = 230万円
- B社:100万 + 2万×36か月 = 172万円
逆転します。
実際に何年使うつもりなのかを決めて、その期間で比べてください。 1年なのか、3年なのか、5年なのか。これを決めないと、比べようがありません。
安いほうが良いとも限りません
逆もあります。安いのには、たいてい理由があります。
- 困ったときの窓口がメールだけ
- 設定は自分たちでやる前提
- データを移す作業が別料金
- 来てもらうと、その都度費用がかかる
これらが悪いわけではありません。 自分たちでできるなら、そのほうが安く済みます。
大事なのは、自分の会社に必要なものが含まれているかです。設定を自分でやれる人がいない会社が、設定なしの見積もりを選ぶと、結局あとで困ります。
比べるときの、本当の難所
見積もりを比べるときにいちばん難しいのは、金額ではありません。
何を比べればいいのか分からないことです。
A社とB社では、書き方が違います。片方には入れたあとの対応が含まれていて、もう片方には含まれていない。この状態で金額だけ並べても、意味がありません。
先にやるのは、同じ条件にそろえることです。そのために、次の質問を使ってください。
業者に、そのまま聞いていい質問
専門的な知識は要りません。読み上げて構いません。
- 「この金額には、何が含まれていますか」
- 「最初の費用のほかに、必要な費用はありますか」
- 「いまのデータを移す作業は、含まれていますか」
- 「入れたあと、困ったときはどこまで対応いただけますか。それは費用に含まれますか」
- 「使う人が増えたら、料金はどうなりますか」
- 「やめる場合、データはどうなりますか」
- 「今後、追加の費用が出る可能性があるとすれば、どういう場合ですか」
最後の質問が効きます。正直な業者は、ここできちんと答えます。 「追加は一切ありません」と即答する相手には、もう一度確かめてください。
判断できないのは、恥ずかしいことではありません
ITの見積もりは、専門的な言葉と、その会社独自の項目が並びます。普段ITを扱っていない人が、一人で判断できるほうがおかしいのです。
大事なのは、金額の当てっこをすることではありません。何が分からないのかを、はっきりさせることです。
ここで止めていい場合
- 項目に分けられて、それぞれ何の費用か分かった
- 上の質問をして、答えが理解できた
- 使う期間を決めて比べた
- 必要なものが含まれていることを確かめた
このどれもが済んでいるなら、あとは会社として出せる金額かどうかの判断だけです。そこは、あなたにしか決められません。
相談したほうがいい場合
- 質問をしたが、返ってきた答えが理解できなかった
- 項目に分けようとしたが、分け方が分からない
- そもそも、この仕組みが必要なのかどうかが分からない
- 長い付き合いの業者で、細かく聞きにくい
私は特定の製品を売っていません。売る側ではなく、使う側から見ます。
ただし、安いところを探すお手伝いはしていません。 見積もりを並べて値切るための相談は、お請けしていません。やるのは、あなたが自分で判断できるように整理することです。次に同じことがあったとき、一人で判断できるようになるほうが価値があります。
金額の前に、中身です
「100万円は高いですか」という問いには、誰も答えられません。
「100万円で、これとこれとこれをやってくれるそうです。うちには、このうちこれが必要です」——ここまで整理できれば、高いか安いかは、あなた自身が判断できます。