「うちの会社に、パソコンは何台ありますか」
そう聞かれて、すぐに答えられる会社は多くありません。社員が増えたり減ったりするたびに、そのときの担当者がその場で買い足してきた。記録は残っていない。前の担当者はもういない。だいたい、そんな経緯です。
困っているわけではないので、そのままになります。何かが起きるまでは。
だいたい、この3つのどれかで困ります
① 取引先から「確認させてください」と言われた
セキュリティの状況を答えてほしい、という書類が届く。項目を読んでも、何を答えればいいのか分からない。答えられないと取引に響くかもしれない、と焦る。
② 詳しい人が辞めた
その人しか知らないことが、まとめて分からなくなります。どのサービスを契約しているのか。支払いはどこから出ているのか。管理する側のパスワードは誰が持っているのか。
③ そろそろ入れ替えたい
何台あって、どれが古いのかが分からないと、見積もりも取れません。業者に聞くと「まず調査させてください」と言われ、その調査にお金がかかります。
最初にやることは、何も買わないことです
こういうとき、管理用のソフトを勧められることがあります。先に買わないでください。
何があるか分かっていない状態で管理の道具を入れても、空っぽの道具が増えるだけです。入力する人もいません。
次にやることは、一覧表を作ることです
といっても、いきなり書き始める前に、探してみてください。
過去に誰かが作った一覧表が、どこかに残っていることがあります。共有のフォルダの奥、前任者の引き継ぎ資料、業者からもらった納品書の束。見つかれば、ゼロから始めずに済みます。
ただし、正直に申し上げます。見つかっても、たいていは古いです。
いまこの状況で困っているということは、その表がずっと更新されてこなかったということだからです。表はあるのに実態と合っていない、というのが普通です。
それでも探す価値があります。探している途中で、分からなくなっていたことが出てくるからです。契約書に書かれた管理用のパスワード。誰の名前で申し込んだかのメール。どの業者に頼んだかの記録。一覧表そのものより、その周りにある紙のほうが役に立つことがよくあります。
ひととおり探したら、新しく作り直しましょう。 古い表を直すより、そのほうが早いです。
書き出す項目
パソコンについて
- パソコンの名前(ネットワーク上の呼び名)
- 使っている人の名前
- ログインに使っている利用者名
- IPアドレス
- 型番
- 製造番号
- 設置した日(分かる範囲で)
- どこにあるか
ソフトやサービスについて
- 何を使っているか
- 毎月(または毎年)いくら払っているか
- 誰の名前で契約しているか
- 管理用の入り口と、その利用者名
全部を一度に埋めようとしないでください。 分かるところから書いて、空欄は空欄のまま残して構いません。空欄そのものが「調べるべきこと」の一覧になります。
太字にした「誰の名前で契約しているか」は、あとで効いてきます。理由は次の章に書きます。
危ないものは、だいたい3つ見つかります
① 辞めた人の入り口が、まだ生きている
退職の手続きはしたのに、その人の名前で入れる仕組みが残っている。よくあります。悪意がなくても、管理していない入り口があるという状態そのものが問題になります。
② 誰も使っていないのに、払い続けている
月に数千円のサービスが、何年も引き落とされている。始めた人が辞めていて、誰も気づかない。書き出すと、たいてい1つか2つ出てきます。
③ 個人の名前で契約されている
これがいちばん厄介です。会社で使っているのに、契約者が個人になっている。その人が辞めると、会社側から手が出せなくなります。 支払いを止めることも、引き継ぐこともできません。
書き出す作業の価値は、実はここにあります。一覧を作ることが目的ではなく、この3つを見つけることが目的です。
ここで止めていい場合
書き出してみて、
- 危ないものが見つからなかった
- 見つかっても、自分たちで直せそうだった
- 取引先に出す書類が、これで埋まった
このどれかなら、それで終わりです。 誰かに頼む必要はありません。作った表を、次に何か変えたときに更新できる場所に置いておいてください。
頼んだほうがいい場合
一方で、次のような状態なら、外の人を入れたほうが早いと思います。
- 書き出そうとしたが、どこから見ればいいのか分からない(拠点が複数ある、現場と事務所で別々に買っている、など)
- 見つかった危ないものを、自分たちで触るのが怖い
- 取引先の書類に、答えられない項目が残った
- そもそも、この作業をする時間が取れない
最後の理由が、いちばん多いです。難しい作業ではありませんが、手間はかかります。
一度作って終わりにしない
作った一覧は、半年で古くなります。 パソコンを1台買った、人が1人辞めた、それだけでずれ始めます。
ずれた一覧は、無いのと同じです。むしろ「あるはずだ」と思っている分、危ない。
だから大事なのは、作ることよりも、変わったときに直せる状態にしておくことです。誰が直すのか。どこに置くのか。そこまで決めて、はじめて役に立ちます。