「このサービスを入れたいんですが」

社員からそう言われた。あるいは、紙でやっている作業をなんとかしたくて、自分で調べ始めた。

ところが検索すると、似たようなサービスがいくらでも出てきます。 料金が違う。機能が違う。どの比較サイトも、それぞれ別のものを勧めている。

結局、**「どれを選べばいいのか」**で止まります。

最初にやることは、サービスを探すのをやめることです

検索して比べ始めたくなりますが、そこから始めると終わりません。

理由は単純で、何を解決したいかが決まっていないと、比べようがないからです。比べる物差しが無い状態で50個の商品を眺めても、決まるわけがありません。

最初にやるのは、いま何に困っているかを書き出すことです。

  • 同じ内容を、2つの場所に入力している
  • 紙の申請書を回すのに、3日かかっている
  • 勤怠の集計に、毎月半日使っている
  • 顧客の情報が、人ごとに別々の場所にある

この段階では、サービスの名前を一切出さないでください。 困りごとの言葉だけで書きます。

次にやることは、機能を2つに分けることです

候補が見えてきたら、必要な機能を**「絶対に要るもの」と「あったら嬉しいもの」**に分けます。

たとえば顧客の管理なら、

絶対に要るもの

  • 顧客の情報を登録できる
  • 探せる
  • 複数の社員が同時に使える

あったら嬉しいもの

  • メールとつながる
  • 営業の進み具合が見える
  • 集計が出る

分けておくと、「あったら嬉しい」が多いという理由で高いほうを選ぶ、という失敗が減ります。

機能が多いものを選ばないでください

サービス選びでいちばん多い失敗が、これです。

機能が多いから、こっちのほうが良さそう

会社にとって大事なのは、機能の数ではありません。 いまの困りごとが解決するかどうかです。

社員10人の会社が、100人の会社向けに作られたものを入れると、使わない機能の設定と管理だけが増えます。 楽にするために入れたのに、仕事が増えるという結果になります。

料金は、月額だけを見ないでください

「月額1万円」と書いてあっても、実際に払う額はそれだけではありません。

確認するのは、こういうところです。

  • 最初にかかる費用
  • 月々の費用
  • 人数が増えたときに、いくら増えるか
  • 追加の機能の費用(必要なものが追加扱いになっていないか)
  • 導入を手伝ってもらう費用
  • いまのデータを移す費用
  • やめるときの条件

太字にした2つが、あとで効いてきます。人数で増える料金は、社員が5人増えた時点で見え方が変わります。データを移す費用は、見積もりに入っていないことが多く、あとから出てきます。

社員が使えるかどうかを、先に確かめてください

どれだけ優れていても、社員が使わなければゼロです。

  • 操作が難しくないか
  • 外出先でも使えるか
  • いまの仕事のやり方と、大きくずれていないか
  • 教える時間が要るか
  • 困ったときに聞ける窓口があるか

太字のところが、いちばん大事です。いまのやり方と大きく違うものを入れると、現場は前のやり方に戻ります。 そして「あのシステムは使えない」という話になり、費用だけが残ります。

新しい仕組みが根づくかどうかは、機能ではなく、いまのやり方との距離で決まります。

やめるときのことを、入れる前に確かめてください

これは、ほとんどの人が忘れます。

  • やめたら、データはどうなるか
  • データを取り出せるか。取り出せるとして、どんな形か
  • 別のサービスに移せるか
  • 契約の期間に縛りはあるか

取り出せないサービスを選ぶと、不満があっても移れなくなります。 値上げされても、使いにくくても、続けるしかありません。

入れる前の5分の確認で、これを避けられます。

3つくらい並べて比べる

候補が絞れたら、表にします。

A B C
料金 ○ △ ◎
絶対に要る機能 ◎ ◎ ○
使いやすさ ○ ◎ △
困ったときの窓口 ◎ ○ ○
データの持ち出し ○ △ ◎

並べると、単純な優劣ではないことが見えてきます。 「料金ならA、使いやすさならB」と分かれば、あとは会社としてどちらを取るかの判断です。ここまで来れば、もう選べます。

ここで止めていい場合

  • 困りごとがはっきりしていて、候補が2〜3に絞れた
  • 絶対に要る機能を、どれも満たしている
  • 無料で試せるので、実際に触って決められる

このどれかなら、自分たちで決めて大丈夫です。 できれば、実際に使う社員に何日か触ってもらってください。

相談したほうがいい場合

  • いま使っているものと、つなぐ必要がある(会計、販売管理など)
  • 社員が使ってくれるかどうかに、不安がある
  • 一度入れて、使われなくなった経験がある
  • 見積もりの金額が妥当かどうか、判断できない
  • そもそも、サービスを入れることが答えなのかが分からない

最後の項目が、実はいちばん大事です。

サービスを入れることが、目的ではありません

困りごとによっては、サービスを入れないほうが早いことがあります。

いまの表計算の使い方を少し変えるだけで済むことがあります。紙の申請書が3日かかっているのは、システムが無いからではなく、承認する人が3人いるからかもしれません。その場合、システムを入れても3日のままです。

**「どのサービスを選ぶか」の前に、「そもそもサービスの話なのか」**があります。

ここを飛ばして道具だけ入れると、使われないものができあがります。何度も見てきました。