AIに答えさせる前に、同じ質問が何件来ているかを数えてください。

問い合わせ対応は、AIを入れたくなる筆頭です。

  • 同じことを何度も聞かれる
  • 電話が鳴るたびに、作業が止まる
  • 担当者が席を外すと、誰も答えられない
  • 答えられる人が1人しかいない

どれも本当に困ることです。ただ、いきなり仕組みを入れると、たいてい外します。

まず、20件並べてください

導入の話をする前に、これをやってください。費用はかかりません。

直近の問い合わせを20件、メールや電話のメモから並べます。そして、分けます。

分け方 見るところ
A 答えがいつも同じ 営業時間、場所、送料、必要な書類など
B 調べれば答えられる 注文の状況、在庫、前回いつ納めたか
C 人が判断する 値引き、納期の相談、苦情、例外の扱い

数えると、だいたいこうなります。

Aが多ければ、AIは要りません。 よくある質問のページを1枚作るほうが早くて、安くて、間違えません。

Bが多ければ、効きます。 ただし効くのは「AIが答える」ことではなく、調べる先がつながることです。

Cが多ければ、AIの出番は限られます。 ここを任せると、話がこじれます。

★この仕分けをせずに入れた会社が、「思ったほど減らなかった」と言います。 減らないのではなく、減らせる種類が入っていなかっただけです。

「一次受け」とは、どこまでか

AIに任せるのは、一次受けまでです。言葉の意味をはっきりさせておきます。

お客様からの問い合わせ
   ↓
① AIが内容を聞き取り、整理する      ← ここは任せてよい
   ↓
② よくある質問なら、答えの候補を出す  ← ここも任せてよい(※下の条件つき)
   ↓
③ 人が目を通す                      ← ★ここを省かない
   ↓
④ 返事を出す

★③を省くかどうかが、すべての分かれ目です。

省いてよいのは、間違えても取り返しがつく内容だけです。営業時間を間違えて伝えても、謝って直せます。納期や金額を間違えて伝えたら、そうはいきません。

導入前に決めること

ここを決めずに始めると、必ず揉めます。

① 人に代わる合図を決める

次のどれかが出たら、AIは答えず人に回す——という線を決めます。

  • 苦情、怒り、謝罪が必要そうな言葉
  • 金額、値引き、支払いの話
  • 納期の変更
  • 契約の解約
  • AIが「分かりません」となったとき

最後が大事です。分からないときに、それらしい答えを作らせないこと。

② 答えの元になる資料を決める

AIに自由に答えさせるのではなく、こちらが用意した資料の中から答えさせる形にします。元の資料が古ければ、古い答えが出ます。誰がその資料を直すのかまで決めてください。

③ 名乗らせ方を決める

お客様に、AIが応対していることを隠さない。 あとで分かったときの印象が、いちばん悪いです。

④ 記録の残し方を決める

何を聞かれて、何と答えたか。これが残らないと、改善のしようがありません。

⑤ 個人情報の扱いを決める

問い合わせには、氏名や連絡先が入ってきます。ここは別の記事に書きました。

→ ChatGPTなどを社内で使うときのルールの作り方

自分たちでできること

① 20件を仕分ける(上のA・B・C)

② Aの答えを1枚にまとめる

これだけで問い合わせが減ることがあります。AIを入れる前に、まずここです。

③ 「誰も答えられない時間」を書き出す

担当者が外出している時間、昼休み、終業後。本当に困っているのは件数ではなく、この時間帯かもしれません。そうだとすれば、打つ手が変わります。

④ 1週間、電話の内容をメモする

メールと違って、電話は記録が残りません。いちばん多い問い合わせが、記録に残っていないことがよくあります。

やらなくていいこと

  • 全部の問い合わせに対応させること。 Cは最初から外してください
  • ホームページに置く前に、完璧にすること。 社内向けに使って、答えの質を確かめるほうが先です
  • 電話をAIに取らせること。 難易度が別物です。文字のやり取りから始めてください
  • 専用の仕組みを作ること。 いまあるサービスで足りるかを先に確かめてください

頼んだほうがいい場合

  • 仕分けてみたが、どれに当たるのか判断がつかない
  • Bが多かった(調べる先をつなぐ話になるので、中身を見る必要があります)
  • すでに入れたが、使われていない
  • お客様の情報が入ってくる窓口で使いたい

「入れるべきか」から相談してくださって構いません。 数えた結果、要らないという結論になることもあります。


→ 業務AI化カルテ(10問・無料)